事業承継における自社株買いのメリット・デメリットを解説
中小企業の事業承継における自社株高騰による後継者の資金不足という課題を解決し、円滑に経営権を移行する手法が、会社による自社株買いです。
本記事では、事業承継で自社株買いを活用するメリットとデメリットを解説します。
事業承継で自社株買いを活用するメリット
事業承継で自社株買いを活用するメリットは次の通りです。
相続人の納税資金を確保できる
現経営者の引退・相続時、現金化が難しい自社株式を会社に売却することで、多額の現金を確保できます。
この現金は、引退後の生活資金、相続税の納税資金、他の相続人への遺産分配資金として活用可能です。
株式売却益は譲渡所得として課税されますが、要件を満たさないとみなし配当として高い税率が適用される可能性があります。
ただし、相続した株式を相続開始の翌日から3年10ヶ月以内に売却すれば、譲渡所得課税の特例適用により、税負担を大幅に抑え、より多くの資金を残せます。
経営権を後継者へ集約できる点
会社が現経営者や経営に関与しない親族から株式を買い取ることで、後継者にスムーズに経営権を移行できます。
会社が買い取った株式は、自己株式として保有されるか、または消却されるため、市場に出回ることはありません。
その結果、後継者が個人の資金で新たに株式を買い増すことなく、相対的に後継者の議決権割合が上昇し、安定した支配体制を構築できます。
事業承継で自社株買いを活用するデメリット
自社株買いは有効な承継手段である一方で、次のようなデメリットがあります。
会社の財務基盤が弱まるリスクがある
会社が現経営者や親族から株式を買い取るためには、多額の現金を社外へ流出させることになります。
長年蓄積してきた利益剰余金などの内部留保を取り崩すことになるため、会社の自己資本比率が低下し、会社の体力である財務基盤が弱まるリスクを伴います。
手元の現金が減少することで、新たな設備投資や人材採用への資金繰りが悪化する可能性や、金融機関からの評価が下がる懸念も生じます。
法律による買い取り額の制限がある
会社法により、自社株を買い取るための資金源は、原則として買取り時点の分配可能額の範囲内に厳しく制限されています。
この規制は、債権者を保護するための規定であり、会社に利益剰余金などの余裕資金が十分にない場合は、希望する株数を買い取ることができません。
この分配可能額の算出は複雑であり、通常の決算書上の数値だけでなく、会社法や税法に基づく専門的な計算が求められます。
まとめ
自社株買いは、納税資金の確保や経営権の集約に有効な事業承継の手法です。
しかし、多額の現金流出による財務悪化や、会社法による分配可能額の制限といった課題も存在します。
この手法を安全かつ確実に実行するためには、自社の財務状況で実行可能かを見極め、税務・法務の両面から最適な承継計画を立てる必要があります。
リスクを回避し、最良の結果を得るためにも、早い段階で税理士へ相談することをおすすめします。
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